希望の森自由学園
1
「あんた達、高校はどこ行くか決まったの?」
「俺は希望の森自由学園に行く事になった」
「聞いたこと無い高校ね?どこらへん?」
「東京の山奥の全寮制の男子校」
「全寮制の男子校?やだ王道じゃない。本当に?」
「うん・・・。王道って?」
「BLの王道じゃない。山奥の全寮制男子校。気を付けなさいよ和は可愛いんだから」
「BL?俺可愛くないし・・・。平凡のど真ん中じゃん」
「これだから無自覚は怖い。気を付けるのよ、俺様生徒会長とか、しっかり者の副会長とか、可愛い書記とか。やだ興奮してきた」
「姉ちゃん・・・。妄想中申し訳ないんだけど・・・。そこの学校今年創立だから、先輩とか居ないし・・・」
「え~居ないの?ちょっと残念でも、和なら総受け間違いなしよ!!」
「・・・総受け?」
興奮しながら話すのは俺たちの姉ちゃん。
すっげえ可愛くて、ミスコンなんかで優勝しまくりの自慢の姉ちゃん。
血が繋がってんのにどうしてこうも違うのかと両親に聞きたいくらいだ。
「・・・・・・」
目の前にいる弟もビックリするくらいカッコいい。
卒業式の時なんか制服のボタンやら校章なんかも全部綺麗に無くなるくらいモテる。
俺なんて綺麗な制服だったぞ。
何でこんなに違うかな?
双子なのに・・・。
俺と弟は双子なんだ。
二卵性双生児ってやつ。
一卵性じゃないから似てなくて当たり前なんだけど・・・。
ここまで違うと双子である事も疑いたくなる。
背なんてあっという間に追い抜かされて今じゃあ20cmも違くなって見上げなきゃいけない。
何で俺は成長止まっちゃったんだよ~。
「力はどこ行くの?」
「・・・和と同じとこ」
「えっ???一緒?3年間?」
「・・・いけねーのかよ。もう寝る」
「おやすみ~」
また3年間力と同じかよ。
せっかく離れられると思ったのに。
比べられる俺の気持ちも少しは考えろよ・・・。
でも、成績は俺の方が断然良いけどね~。
悔しいから何か力より出来たくて勉強を頑張ったら結果がすぐに付いてきた。
力も頑張ったんだな?
「和。お姉ちゃんの忠告聞くのよ。和は可愛いから気を付けなさいよ。何かあったら力に頼る事。分かった?」
「俺可愛くねーし大丈夫だよ。姉ちゃんたちと違って平凡ですから!!」
『その無自覚が怖いのよ。あんたは母さん似で女顔なんだから。背も低いし、体力無いし。大丈夫かしら?』
「じゃあ姉ちゃん俺も寝るから。おやすみ~」
俺がどんなに頑張って同じ高校に合格したかアイツは分かって無い。
勉強なんて嫌いだし、高校も行かなくても良いと思っていた。
でも、アイツの志望校を聞いて愕然とした。
全寮制の男子校?
3年間会えないのか?
しかも周りはヤローばかり。
そんなライオンの巣にウサギを通わせる事なんて出来ねえだろ?
それから俺は必至こいて勉強をして合格を掴み取った。
これで3年間同じ時間を過ごせる。
俺がまた守ってやるから。
中学の3年間もどんだけ俺がアイツを守ってやったか。
アイツに近づこうとする悪い虫を片っ端から排除して行った。
何人アイツに告白しようと思ったやつがいた事か。
それだけアイツはモテる。
「誰にもやんねーよ」
『絶対その事守んなさいよ』
「・・・姉貴。当たりめえだろ。誰にも渡さねえ」
『和の事頼んだわよ。あの子モテるのに自覚ないから困るのよ』
「ああ。大丈夫だ。心配すんな」
『力も苦労するわね。あんだけの鈍感だと』
「もう慣れた。生まれた時から一緒なんだから」
そう、俺たちはお腹の中から一緒だった。
出て来るのが少し遅かっただけ。
でも、その数分が越えられない壁な気がする。
その上アイツは超が付くほど鈍感だ。
俺がこんな想いで近くに居るのなんて全然気付いてない。
口煩い弟としか思われてない。
でももう慣れた。
一緒に居られればそれで良い。
虫が付かない様に、水戸黄門で言えば“スケさん、カクさん”?
和が笑って過ごせさえすればそれで良い。
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