希望の森自由学園




何だこいつ。
いきなり入って来て、俺の前に来たけど、何も話さない。
俺の顔が怖かったのか?
そんな事はもう慣れっこになっていた。
怖がって逃げて行くヤツばっかりだった。
こいつも同じなんだろう?
でも、顔色一つ変えやしねえ。
それに、無視しやがった。
それも2回も・・・いや正確にいえば3回か?
最後にやっと答えた。
「綺麗な金髪ですね?触って良い?」
って、何も許可してないのにいきなり触って来やがった。
撫で回した挙句にゴン太~とか言いながら抱きしめて来た。
俺が怖くないのか?
何でそんな態度なんだ?
皆が怖がって近寄りもしないのに。

「すぅ・・・」

寝やがった。
俺を抱きしめたまま。
どうなってんだ?
寝るって怖がってねーよな?
普通怖い奴の前でなんて寝ないよな?
初めて人にこんな風に接せられた。
怖がらずに来てくれた。
寝息を聞きながら初めての経験に胸を高鳴らせた。




「んん・・・?」

いつの間に眠ってしまったらしい。
何か温かい。
フワフワして母ちゃんに抱きしめてもらってるみたい。
温かいから人肌って大好き~
え?人肌?

「目え覚めたか?」

俺の下から声がする。
力よりももっと低い声。
誰?
うつ伏せになった顔を上げると、すぐ上にそれはまたカッコいい顔があった。
え?何でそんなとこにいるの?
自分の置かれてる状況を冷静になって考えた。
自分の頭の上に誰かの顔がある?
自分の下は温かい。
ん?ん?んんん?
俺この人の上に寝てるのか?
は、恥ずかしい。

「す、すいません」
「いや、いいけど」

その人の上から飛び起きて前のソファーに移動する。
彼ものそりと起き上がり俺の前に座った。

「・・・はじめまして、伊藤和です。よろしく」

にっこりと微笑んだその顔があまりに可愛くてビックリした。
怖がる風でも無く何とも思ってないみたいだった。
初めての事でドキッとする。

「石井翼。お前俺が怖くないのか?」
「えっ?怖がった方が良いの?」
「・・・・・・」
「翼は怖くなんか無いよ?ゴン太みたいで可愛い」

可愛い?生まれて初めて言われる言葉に違和感を覚える。
可愛いってのはお前みたいなのに言うんだろ?
俺が可愛い?
ゴン太って何だ?
ってかもう翼かよ。
別に良いけど。

「・・・さっきは悪かった怒鳴ったりして」
「大丈夫~慣れてるから仲良くしようね翼~」

翼と呼ばれて何だか嬉しい自分がいた。



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